4月ということで何か違うことをしてみようと思い立ったので、
今回は唐突に「オススメの本 変わり種編」です。
候補としては絵本や図鑑、写真集など色々あった中でこれは皆さん知らないんじゃないかな
というものを選んでみたので、ぜひ最後まで読んで頂ければ幸いです。
今回紹介するお話の名前は『ラストウィンドウ』(マーティン・サマー著)。
ロサンゼルスを舞台にした元刑事のセールスマンが主人公のミステリー小説。
「聞いたことない作家さんだな…」と思ったそこのあなた。
ご名答です。
著者のマーティン・サマーはなんと 実在しません。
それもそのはず、このお話が収録されているのは任天堂DSソフト「ラストウィンドウ 真夜中の約束」の中。
ゲームの物語が進むごとに書き加えられていく物語は、ラストウィンドウの前作にあたる「ウィッシュルーム 天使の記憶」に登場した作家、マーティン・サマーが書いている。という設定になっています。
今作では名前しか出てきませんが、このマーティン・サマーという男、前作では一癖も二癖もある性格で主人公カイルを引っ掻き回してくれます。
カイル・ハイドというセールスマンらしからぬ不愛想だけど世話焼きな男に興味は尽きず、とうとう彼を主人公に小説を書いてしまったのが今回の小説です(と、私は思っています)。
ゲームの中の小説ということで、気になるのはその内容です。
1980年代、ロサンゼルスの元刑事カイル・ハイドは、行方不明になった相棒を探すため冴えないセールスマンに身をやつし、元上司の営む裏稼業を手伝いつつ因縁に対峙する。
そこまでが前作ウィッシュルームのあらすじで、今作はその一年後。取り壊しが決まり立ち退きを迫られるアパートで、奇妙な依頼がカイルのもとに舞い込む。捜索を進めるうち、住民たちの抱える秘密が過去の事件を浮かび上がらせ、その謎はやがてカイルの父の死の真相へと繋がっていく。
面白そうなあらすじですよね。実際、面白いです。
けれども小説の感想として言えば、普通の推理小説でした。
海外の小説を翻訳したような言い回しは洒落が効いていて、少し硬めに感じますが海外小説を読み慣れている人ならさほど違和感なく読み進められるかなという感じ。
登場するキャラクター達はゲームをプレイする中で為人がわかっているので、感情が読めない、感情移入しづらいという海外小説あるある(個人的な意見です)がなく日本の作品ですが海外小説入門に向いているような気がしました。
ただ、ゲームの進捗に合わせて加筆されていくため、いざ読む段になった時にはトリックがわかってしまっているので推理要素はほぼゼロです。推理を楽しみたいならゲームの内容を忘れたころに読み直してみるのがいいと思います。
プレイヤーのゲーム内での選択で小説の内容が少し変わるトリッキーな演出など、ゲームプレイ込みで作品の雰囲気を楽しむための小説かなというのが率直な印象でした。
前作ウィッシュルーム含め、カイル・ハイドという男を描いた作品としてとてもいい作品なので、これを機会にぜひ興味を持っていただければなと思います。