今回は前回宣言した通りしっとりとした映画を巡りたいと思います。
しっとりとは何ぞや、と自分でも思いますが、
主観と偏見でもって選んだので巡っていきましょう!
『画家と庭師とカンパーニュ(2007)』
◆あらすじ◆
都会で画家として成功したものの妻とは不仲、
娘からも愛想を尽かされた老齢の男は
両親が亡くなってから放置していたカンパーニュ(田舎)の実家に戻ることにした。
荒れ放題な庭の手入れに庭師を募集すると、
現れたのは、少年時代のいたずら仲間だった。
彼は妻を愛し家族から愛され、定年後に念願の庭師になったという。
全く違う生き方をしてきた二人だったが本質は変わらず、
お互いを「キャンバス」「ジャルダン(庭)」と呼び合い
とりとめのない会話を交わしながら旧交を温めていた。
しかし、穏やかに流れる時間は長くは続かず——。
フランスの田舎の片隅で交わされた二人の会話が織り成す物語。
個人的な感覚で言えば、展開の派手さや内容よりも
芸術性が前面に出ている作品を“しっとりしている”と感じる傾向があります。
ということで芸術の都パリの画家が登場するフランス映画を一つ。
まどろみの午後にゆったり観て心地いい作品です。
作中ではお互いを本名ではなく“キャンバス”“ジャルダン”と呼び合いますが、要はあだ名のようなもので、幼少期のいたずら仲間をあだ名で呼び合うお茶目さは個人的に好きなポイントです。
フランスの田舎の田園風景と夏の日差し、
川のせせらぎ、二人の語らい、鮮やかな絵画。
時間ってこんなにゆったり流れるものだったんだと気付かせてくれます。
原題『Dialogue avec mon jardinier(私と庭師の会話)』の通り、
内容や展開は二人の会話を中心に淡々と進んでいくので
映画らしい展開を求めて観ると肩透かしを食らうかもしれませんが
これはフランス映画。
ハリウッド作品とはまた違った性格をしています。
『最強のふたり』(仏)とそのリメイク『人生の動かし方』(米)の違いが分かりやすい例かなと。
どちらがいいというわけではありませんが、
アメリカ映画の方が、表現がわかりやすいなと思います。
英語もそうですが仏語はより言葉遊びが難解というか。
ドラマチックよりロマンチックというか。
異文化の自分には本質を理解できていないんだろうなぁと思うことも多いのがフランス映画。
芸術とは得てしてそういうものなのかもしれませんが、少しもどかしいです。
庭師で思い出しましたが、
少し前からバラなど夏のお花が見ごろを迎えています。
様々な場所で素敵な庭園が解放されているので、
何かの機会に散策してみると、
異国の香りを感じられるかもしれません。
レモンタルトのような爽やかでしっとり美しい映画。
大衆娯楽の映画だけど芸術作品のような仕上がりで、
古くから芸術を娯楽として楽しんでいたヨーロッパの風を
この映画を通して感じてみてはいかがでしょうか。