
さて、日差しが夏の鋭さを帯びてきた6月。
近所の公園ではバラが鮮やかに綻び始めました。
枝葉の緑と赤やピンクのバラを見ると夏の始まりを感じ、
背の高いひまわりが太陽を仰ぐと夏本番!って感じですね。
ひまわりと言えばゴッホの作品が有名ですが、
今回のオススメの本【さよならソルシエ】は、
ゴッホの弟、テオドルス(通称テオ)を主人公とした漫画です。
全2巻でサクッと読めるので、軽めに読みたいときに最適。
◆あらすじ◆
当時、パリ画壇は保守層によって牛耳られていた。
上流階級を顧客としている一流画廊グーピル商会は、
貴族たちの階級意識を象徴する一端であり、
市民からはどこか遠い存在だと思われている。
そこで働き、パリ一の画商として知られていたテオは、
平民には価値がわからないと見下し伝統こそが芸術であると
新しい才能に排他的な画壇に一石投じようと画策していた。
画壇から締め出された気鋭の芸術家たちの作品を評価し、
中でも兄フィンセントの才能を確信していたテオは、
芸術をもっと開かれたものにするべく、
誰もが想像もしない方法でパリの芸術界を魔法にかける。
史実じゃないとわかっていながらも、
気になったので兄弟がどんな人物だったのか調べてみたら、
まあなんと言うか、何とも人間らしい兄弟でした。
ここまで執着と衝突を繰り返しはしないですけど、
兄弟や家族ってこういう所あるよなぁと思ってしまいます。
事実は小説よりも奇なりとは言いますが、まさにだなぁと。
兄の鮮烈な才能に埋もれがちですが、
現代でも名を知られる数多くの芸術家を見出したことなど、
若くして亡くなったことを考えると、弟テオの才能も疑うべくもないのかもしれません。
漫画の内容はフィクションなので、
とある人物の回顧録みたいなものではなく、
しっかり“創作”作品として、
奇をてらったアイデアでとても面白かったです。
絵柄もとても素敵で、
鋭利だけど人間味のあるテオの内面に共感しつつ、
計り知れない情熱に圧倒されたり。
余談ですが、
漫画ではキリっとしたツリ目で描かれているテオ、
実物は垂れ目のおっとりした顔立ちです。
フィンセントに似ていますが、やや柔らかい雰囲気ですね。
空気感は情熱のフィンセントとは真逆のようですが、
その実、内に秘めた情熱は兄にも劣らなかったのでは。
それほど、兄の才能に対して揺るぎない自信を持っていることが伺えるエピソードが多いことでも有名です。
先を読む確かな瞳で「魔法使い(ソルシエ)」と呼ばれた
テオドルスはどのようにして世界を魔法にかけたのか。
フィンセント・ファン・ゴッホという画家の人生に
必要不可欠だった最高の理解者テオの本当の心の内とは。
これは炎の画家ゴッホの人生に隠れた、もう一人のゴッホのお話。