
ミステリ小説レビュアーの方のランキングでイチオシされていた作品。
『占星術殺人事件(1981) 』島田 荘司/著
ちなみにランキング1位は『十角館の殺人』(綾辻行人)で、
占星術殺人事件はトリック至上主義のレビュアーの方のイチオシとのこと。
◆あらすじ◆
画家の男が密室のアトリエで殺害され、その部屋からは遺書ともとれる手記が見つかった。
手記には、占星術的観点から特定の性質を持つ6人の処女を殺害し、
それぞれの体の一部を継ぎ合わせた理想の女性「アゾート」を作成するという
猟奇的な殺人計画が記されていた。
男の死によって殺人計画は立ち消えたかに思われたが、
手記のとおり6人の女性の遺体が発見され、計画は完遂されてしまう。
以降40年、容疑者不在のこの事件は何度も検討され、
数多の推理が検証されたが、結局解決に至ることなく今に至っていた。
そして現代、この事件の関係者を名乗る者からの相談で、
“占星術師”御手洗潔のもとに推理依頼が舞い込んでくる。
・
・
・
この小説は画家の男のものとされる手記から始まります。
手記の内容は男が傾倒していた占星術的思考に基づいた殺人計画。
これがまた古めかしい言葉や表記と登場人物の多さで、捲れど捲れどページは進まず。
すぐに展開を求める現代人、ここでリタイアする人も多そうだなと思いました。
ここに伏線あったらもう無理だな、と思いながら読み進めること40ページくらい。
主人公のターンになって一気に読みやすくなります。
最悪、冒頭の手記は斜め読みでもいいので、
主人公を一目見るまでは頑張りましょう(笑)
人気シリーズの一作目とあって手に取る人が多そうなこの本。
途中離脱はもったいない内容だったのでぜひとも最後まで読んでほしいです。
「トリックが随一」の触れ込みどおり綿密に情報が張り巡らされていて、
プロローグで“すべての情報は読者の目に開示されている”とあるように、
本文中には、伏線ではなく事実そのものが明示されています。
後は自分で考えるだけ。
文字だけだとわかりづらい部分には図も差し込まれていて、
“読者への挑戦” の形をとっている本作は、
さながらマーダーミステリーを体験しているようでした。
*マーダーミステリー:殺人事件の登場人物となって推理および脱出を目指すゲーム
細かい部分は頭がパンクしそうだったので一旦置いといて、
犯人とその動機や大まかな犯行方法について
目星を付けながら読んでいたらほとんど当っていました。
難解なトリックで知られる小説なのでちょっとうれしい。
とはいえ、今回犯人に目星をつけられたのは、
直感、文章からの推察、ちょこっと推理で、
推理力かと言われればそんなことはないのです。
逆に言えば、こんなポンコツにも何となく察せられるように書かれた
文章そのものが素晴らしいということでしょう。
但し、早々に犯人のあたりをつけてしまい、
話が進むにつれてその妥当性が高まるほど、
「え、それが真実なの?!」という驚きは小さくなってしまいました。
ミスリードを検証する楽しみが減ったといいますか。
・・・まあ、自分のせいですが。
最近こんなことが多い気がするので、
一旦推理小説から離れて勘を鈍らせようかと考えているところです(笑)