読書の秋、読書が止まらず気付けば10月の読書費用は5,000円くらい。
サブスクに入れ?・・・自分でもそう思います。
それでもって今回もミステリをご紹介。
ミステリばっかり紹介していて申し訳ない!
けれどもミステリを読んでしまうのだ!!
ということで、今回のおすすめの本は、
古典ミステリの巨匠エラリー・クイーンの名作。
『Xの悲劇』(1931) バーナビー・ロス 著
バーナビー・ロスはエラリー・クイーンの別名義です。
ここに関してはエラリーが自身の姿さえトリックにしてしまうという
面白い仕掛けがあるのですが、それはまた別のところで語ることにしましょう。
◆あらすじ◆
満員の路面電車。
婚約披露パーティへ向かう一同の中から、主役の男が何者かに毒殺される。
株式仲買人だった男はその横暴さも相俟って
多方面から恨みを買っており、捜査は混迷を極めた。
捜査担当者は、かつて見事に事件を解決した名俳優ドルリィ・レーンに協力を仰ぐ。
レーンはすぐに犯人の目星はついたというが、
何故かその詳細を話そうとせず、どうかわかってほしいと言うだけだった。
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エラリー・クイーンに関しては名前だけ知っていて、
オススメの本49で紹介した「十角館の殺人」で
登場人物の一人がこの名前で呼ばれていたことや、
新本格派ミステリを読むにつけ文中やあとがきで名前を目にする機会も多く、
ミステリを好む人間としては知っておくべきか?と思い
まずは有名なシリーズの一作目「Xの悲劇」を手に取りました。
一番有名なのは「Yの悲劇」らしいですが、こういうのは始めから読む質です。
読んでみての感想ですが、
古典として誰もが真っ先に名前を挙げるのには意味がある。ということを実感しました。
こういう古典作品って、
古典というだけあってトリックが現代に至るまでに使い古されていたり、
新鮮さに欠けていたりすることも多いなと思っておりました。
まあ、定番だよね。と。
けれども!
Xの悲劇を読み終えた時、そのあまりの鮮やかさに感動すら覚えました。
理知的で整然として、且つ物語としての厚みがあり、
予測できない展開の裏付けは綿密で、これぞ理想のミステリという感じ。
納得感と物語の意外性が決して対立することなく共存していて、
内容もトリックも本格ミステリなのに、その手段は時に予想外で驚きに満ちて、
登場人物の葛藤や行動の一つ一つまで丁寧に意味を持って描写されている。
最後の謎解きで、全体を通しての構成の美しさを思い知らされ、
洒落と皮肉の効いた最後の一文に、思わずニヤリとしてしまう。
この作品を人に例えるとしたら、迷わず「英国紳士」と答えるでしょう。
翻訳されているとはいえ文章がやや近代文学寄りである点や、
時代背景が二十世紀初頭で価値観に馴染みがない点で、
普段読書をしない人はちょっと読みづらく感じるかもしれません。
それを込みで、ミステリ好きなら一度は読んでおきたい作品かなと思います。









