なんだかキナ臭い昨今の世界情勢ですが、
今一度歴史を振り返って教訓とするのがいいのかもしれません。
『アルファベット・ハウス』ユッシ・エーズラ・オールスン/著
第二次世界大戦に翻弄された男たちの人生を記したサスペンス。
戦後、体制が整うまでの間の歪な社会の人間模様を扱うミステリ小説って、
ニッチなようで意外と多かったりします。
作家自身も激動の時代を肌で感じていたのでしょう。
■あらすじ■
第二次世界大戦中、特殊作戦の最中撃墜され
敵地に取り残されてしまった英国空軍のジェイムズとブライアン。
ドイツ兵になりすまし生き永らえることには成功したものの、
劣悪な環境と悪意、詐病がばれたら処刑、
そして何より迫りくる戦火から逃れるため
ブライアンは重篤な状態に陥っていた親友ジェイムズに
必ず助けに戻ると誓い、一人で脱出を決行する。
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珍しく作家買いをした作品で、
だからこそ一切の前情報なしで読んだのですが、
第二章に入って話の展開が見えたあたりで少しホッとしました。
これ、最後までずっと脱出できるか出来ないかが繰り返されるお話じゃないよね。
という不安が浮かぶくらいには脱出に時間がかかり状況も二転三転します。
しかも一切好転しないので結構メンタルがへこみます(笑)
ミステリ作品と紹介されているものの、
第二部の中盤まではミステリ要素はほぼないです。
サスペンス作品かといえばそれもしっくりこないですけど。
あと登場人物が多い上に名前が難しいので覚えづらい点は要注意。
視点主によって「相手を誰と認識しているか」が違うので、
視点が変わるごとに「○○って誰だっけ?」が発生しがち。
特徴、今の名前、過去の名前、苗字、名前、当時の階級。
一人当たり5つくらい呼び名がありましたね。
以前に紹介した特捜部Qの著者の作品で、
やはり本作も魅力的なキャラクターが作品の特徴として際立っています。
どうやってこう、
“人間のピュアさを保ちながら不自然じゃない人物”を
作品に落とし込んでいるんでしょうね。
決して純真無垢というわけではなく、
むしろ人生を通して人間の汚い面を嫌というほど見てきたような人物ばかりで。
ただ、人間の善性が根幹にあるように感じさせられるキャラクターたちなんです。
ふとした時に挟まれるジェイムズの軽率さとその裏に垣間見える虚飾の描写は、
そうか、この最後に繋がっていくのねと、読み終わってから咀嚼できた感じで、
読了後にジワジワと反芻して考えてしまいました。
つまりジェイムズは何が言いたかったんだろう、というのは、
第一章から散りばめられた二人の関係性や人間性への理解が
前提にないとすんなり理解しづらいものかもしれません。
レビューでは重い暗いと言われがちな本作ですが、
個人的には文章自体は読みやすいし難しい言葉もなく、
辛い描写はあれども人間味があって心に残るお話だったなと思います。
最後の一文に向かっていくまでのブライアンの述懐は絶妙で、
寂寥感とほのかな爽やかさを感じる読後感の良い作品になっていましたよ!
600ページでも行ける!という方はぜひ読んでみてね。という感じ。









