前回に続いて2025年、夏の読書感想文です。
実はこっちの方はかなり前に読み終えていて、
夏が舞台だからという安易な理由でここに据えられていたりします。
それでは気を取り直して、
『読書感想文シリーズ第五弾その②』行きましょう!!
『幻夏』太田愛/著
◆あらすじ◆
ある夏のこと、12歳の少年、水沢尚が行方不明になった。
それから23年が経った冬、興信所を営む鑓水の元に妙な依頼が舞い込む。
依頼主は水沢尚の母 香苗であり、
23年前に行方不明になった息子を見つけてほしいのだという。
訳アリの依頼は受けるべきではないと断ろうとしたが、
提示された前金300万を前に気付けば首を縦に振っていた。
時を同じくして、財閥令嬢の行方不明事件が発生する。
捜査に当たっていた相馬は、少女が最後に目撃されたその場所で奇妙な印に目を留める。
それはかつて、23年前のたったひと夏共に過ごした友人、
水沢尚が最後に目撃された現場に残されたものと同じ印だった。

この小説は会社の人に紹介してもらいました。
本の読み方が違うタイプということで、
同じ本を読んだ時にそれぞれどういう感想を抱くのか。気になりますね。
内容の感想としては、
トリックはないので、ひらめき的な気持ち良さはないけれど、
小説として読みごたえのある作品でした。面白かったです。
ミステリ作品といえばWho done itやHow done itなわけですが、
日本の小説って「Why done it」が重視されているような気がしていて、
そこを紐解いた先に真実が待ち受ける展開は、
納得感だけではなくて、物語の世界に厚みを持たせていて、
より心に訴えかけるものがありました。
海外文学に端を発する古典ミステリや
日本において80年代以降に定着した本格ミステリとも違う、
それぞれの心の中にこそ真実があるタイプのお話。
ちょうど本作を読んでいる時に、
逃亡した死刑囚をテーマにした映画『正体』が上映していたんですけど、
各視点によって捉えている性質や正義が異なる、
善悪じゃないところを秤にした物語を、自分はなぜか日本っぽいなと思ってしまったり。
映像作品から小説から、海外作品をよく見るだけに、
いい人間か悪い人間か、善意であるか悪意であるか、
というような分かりやすい二軸にしっくりこないこともあって・・・。
良いことをしたから善人なのか、
悪いことをしたから悪人なのか、
悪人は決して善い行いをしないのか、
そもそも善い行いとはなんなのか、みたいなね。
日本の司法制度に切り込んだ社会派な内容でもあり、
ミステリ小説というよりはサスペンスドラマのような体感で、
テーマの重さはさておいて、
幅広い層が読んで面白いと思える内容なのではないでしょうか。
舞台が夏ということもあって、
にじり寄る日差しを臨場感たっぷりに楽しめる本作。
ぜひ、夏の一冊に選んでみてはいかがでしょうか?
これにて今年の読書感想文も完走です!
個人的には非常に当たり年だったなという感じで、
自信をもってオススメできる2冊となりました。
気になった方は読んでみてね~✨









